本読むうさぎ

生きるために、考える

今日の私に贈る詩

今日もおつかれさま。 今日は石垣りんの『空をかついで』を贈ります。 肩は 首の付け根から なだらかにのびて。 肩は 地平線のように つながって。 人はみんなで 空をかついで きのうからきょうへと。 子どもよ おまえのその肩に おとなたちは きょうからあ…

今日の私に贈る詩

今日もおつかれさま。 今日は吉野弘の『生命は』を贈ります。 生命は 自分自身だけでは完結できないように つくられているらしい 花も めしべとおしべが揃っているだけでは 不充分で 虫や風が訪れて めしべとおしべを仲立ちする 生命は その中に欠如を抱き …

今日の私に贈る詩

今日も一日おつかれさま。 今日の私に贈る詩は新川和江の『子どもが笑うと……』です。 ちいさな子どもが クスッと笑うと 草の実が ぱちん! とはじけます クスクスッと笑うと 木の葉がゆれて ひかりが こぼれます クスクスクスッと笑うと もう誰だって いっし…

読みおわらないことの幸福

人はなぜことばに救われたり、支えられたりするのだろう。 何気ない一言だったり、小説の一節だったりに心を動かされるのはなぜだろう。 国語の教科書にも載っている谷川俊太郎の『生きる』という詩がある。教科書のいちばんはじめに載っていて、四月の最初…

嘆きと努力の橋渡しが詩の力

心は言葉によって育まれると考えています。 何気ない一言に慰められるときもあれば傷つけられるときもある。 街角の広告の一文に心打たれたり、ふと開いた1ページに気づきを得たりするときも。 歌に聞き入ることで悲しみを和らげ、腹の底から歌い上げること…

今日はよく生きた

5月の山は緑と白に埋め尽くされる。草木は少しでも陽を浴びようと枝を伸ばし、葉を広げる。葉を照らす陽が白く跳ねる。 万緑の中や吾子の歯生え初むる 中村草田男 万緑は草木が辺り一面に広がる様子。草木の生命力と歯が生え始めた我が子の生命力が重なる。…

思い浮かぶ母の顔は

母の日の川柳コンテストの応募用紙をもらった。 五・七・五で感謝の気持ちやエピソードを応募すると、優秀賞としてギフトカードがプレゼントされる形式だ。 応募用紙を穴のあくほど見つめて、思い浮かんだ案を載せてみる。 冷食に 弁当の味 探してる 頬を打…

四月の底を行く修羅

宮沢賢治と聞けば、『銀河鉄道の夜』や『風の又三郎』を思い浮かべることが多いかもしれない。彼はすぐれた作家であるとともに、詩人としても多くの心を灯す詩を残している。 彼が生前、唯一刊行した詩集の表題作であるとともに終生のテーマであった『春と修…

うさぎの本棚 自分のための子守歌

わたしは「なぜ?どうして?」と「ふしぎだな」を確保・持続しておきたいものだと工夫してきた――気がする。 そのひとつが、じぶん用の「オマジナイ」をつくること。もうひとつが(オマジナイに似ているけど)ウタをつくること――だった気がする。(あとがきよ…

言葉と出会う旅

人生とは言葉と出会う旅と言ってもいいかもしれない。 恩師の言葉に励まされ、街角の広告に心奪われる。そんな経験を一度はしたことがあるのではないか。 心は言葉と出会うことで幹を太くし、枝を伸ばし、葉を茂らせる。 言葉をたっぷりと吸った心はみずみず…

お題 「好きな本を十冊紹介してください」

お題「好きな本を十冊紹介してください」 ランキング参加中読書 ものの見方や考え方に大きく影響したり、何度も繰り返し読んだりしている本を集めました。できるだけ著者や作品の傾向が偏らないように選んだので、次の読書の参考にされてみてください。 小説…

うさぎの本棚 『萩原朔太郎詩集』河上徹太郎編

詩の表現の目的は単に情調のための情調を表現することではない。幻覚のための幻覚を描くためでもない。同時にまたある種の思想を宣伝演繹することのためでもない。詩の目的は寧ろそれらの者を通じて、人心の内部に顫動する所の感情そのものの本質を凝視し、…

心を奮い立たせる詩  『落ちこぼれ』

同じネタで書いていて芸がないなと自分でも思うけど、いいものはいいのだから今日も書きます。 ランキング参加中読書 大好きな茨木のり子の『落ちこぼれ』という詩。 落ちこぼれ 和菓子の名につけたいようなやさしさ 落ちこぼれ いまは自嘲や出来そこないの…

彷徨う子鹿

森に彷徨う子鹿 どこから来たのか どこから出られるかもわからず 遠く轟く雷鳴に怯え 茂みに潜む罠を恐れ かわいそうに震えている 時折、梢の先に覗く空の青さ星の輝きに 心慰めては さらに奥へと踏み入る 身を打つ雨に耐え 一人の心細さを凌ぎ そうしてまで…

陽炎

皆、恐ろしくはないのだろうか。 なぜ今日を生きているのか。 何のために今日を生きているのか。 皆、何食わぬ顔で歩いている。 その中の一人を捕まえて なぜお前は今日を生きているのだ 何のために今日を生きているのだ、と聞いたとしたら。 何と答えるだろ…

うさぎの本棚 『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』木下龍也・岡野大嗣

ランキング参加中読書 うさぎの短歌との出会いといえばこの一冊でした。 短歌って学校の授業くらいでしか関わったことがなく、「なんか難しい」イメージがありました。 『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』はわかりやすい言葉で書かれて…

『草の花』から死との向き合い方を考える

ランキング参加中読書 『草の花』福永武彦 物語の内容に触れます。 作品説明 研ぎ澄まされた理知ゆえに、青春の途上でめぐりあった藤木忍との純粋な愛に破れ、藤木の妹千枝子との恋にも挫折した汐見茂思。彼は、そのはかなく崩れ易い青春の墓標を、二冊のノ…

季節がまた移ろうとしています

ランキング参加中短文エッセイ 景色に桜を見るようになりました。 公園を駆けまわる子どものように春が近づいています。 2月の肌寒くも陽ざしが暖かい気候が好きです。 辺りに注意を向けると、山には桜や梅、垣根に椿、曲がり角に水仙を見つけました。 季節…

人間らしい心を取り戻すために

毎日同じような、単調な日々を繰り返していると頭がぼんやりとかすみがかってきます。 浅い考えしかできない感じ。何を見ても触れても心がマヒしてぼんやりとする感じ。 このままじゃ人間らしい心を失ってしまうと、何か方法はないかと探していると詩歌療法…

うさぎの本棚 『詩を考える』 谷川俊太郎

詩人、谷川俊太郎が詩について論じていて、なるほどな~と思うことがたくさんありました。 詩が芸術である限り、詩を書くことは芸に他ならない。(中略)われわれが人々と結びつく点では、われわれは常に詩人という芸人でなければならない 詩人は芸術家とい…

うさぎの本棚 ポケットに入れたい詩集3選

ポケットに入れて持ち運べる大きさのおすすめ詩集をご紹介します。 表紙がかわいくておしゃれなので、インテリアとして飾るのもいいかもしれません。 空をかついで 石垣りん 表題作「空をかついで」のほか、「表札」や「崖」など、36篇の詩を収めた一冊。 木…

心に詩集を持って

心に詩集を持っていたい。 寂しいとき、不安なとき、勇気が欲しいときに触れられるように、心に言葉を刻んでおきたい。 どんな言葉を蓄えるかでものの見方や考え方が決まる。生き方が決まると言ってもいいだろう。 長田弘は携帯電話などの科学技術の発達によ…

たゆたえども沈まぬように

ここ最近撮った中でお気に入りの1枚。 行雲流水という言葉がありますが、行き過ぎる雲も、流れ去る水も一瞬たりとも留まることはありません。 流れに任せた私はどこまで行くのか。 浮きつ沈みつ、ひ弱な1枚の葉だけれど、 誰も見たことのない場所に流れ着く…

うさぎの本棚 『永遠の詩』シリーズ

人は言葉によって思いを縁取り、言葉によって表現します。 言葉を知っているとそれだけ思いの縁取り方、表現の仕方が豊かになります。 傷ついたときに聞いた歌が心を慰めるように、詩の一節が心の支えとなるときがあります。 ただ、歌と違って詩は接する機会…

海に感じる心

少し前に近所の海を散策しました。 上田敏がフランスの詩人、ボードレールの詩を翻訳した『人と海』に次の一節があります。 こころ自由なる人間は、とわにめずらん大海を。 海こそ人の鏡なれ。灘(なだ)の大波はてしなく、 水や天(そら)なるゆらゆらは、…

うさぎの本棚 中高生に読んでほしい本

本の良いところは、常に新しいものを追わなくてもいいこと。 トレンドの移り変わりが激しいファッションとは違い、本は新しくてもよし、古くてもよしで流行に乗れなかったからとから間に合わないということがありません。 今回は中高生の時期に読んでほしい…

幸せとは何か 『山のあなた』を足掛かりに

山のあなた 出会ったのは高校生の頃だったかと思う。 国語か社会の資料集の片隅に載っていたではなかったろうか。自分以外の誰もそれについて触れなかったから、目に留まりやすいところではなかっただろう。 ドイツの詩人、カール・ブッセの詩を上田敏が翻訳…

俳諧の道のなほ遠く

ちょっとわかりづらいけど、杉の皮に雪が隠れていた。 ちょこんと隠れていて可愛かったから撮った。 山を登りながら歩きながら言葉遊びをする。 思い浮かんだ言葉を俳句や短歌の形にする。 たいていは詩の形にまとまらないし、まとまったとしても拙い出来栄…

明るい方へ

今日は良い日だった。 自分を喜ばせてあげられた。 自分の機嫌を取れるのは自分だけ 明るい方へ 明るい方へ 空に枝を伸ばす木のように。

胸の泉に  塔和子

かかわらなければ路傍の人―塔和子の詩の世界 作者:川崎正明 編集工房ノア Amazon 胸の泉に 塔和子 かかわらなければ この愛しさを知るすべはなかった この親しみは湧かなかった この大らかな依存の安らいは得られなかった この甘い思いや さびしい思いも知ら…