本読むうさぎ

生きるために、考える

死と別れの美学

今週のお題「名作」

 

「好きな作品」と「名作」の違いは何だろう。

特別に思い入れがあるわけではないけど、ついつい見たり聞いたりする作品もあれば、一回きりしか出会っていないのに、今なお心に深く刺さる作品もある。

人生の背骨となるような、悩んだり苦しんだりしたときに立ち返るものを「名作」とするなら、何を挙げるだろうか。

今回はうさぎの背骨である「名作」を紹介したい。

 

■『檸檬梶井基次郎

常にそこにあるのに、普段は意識にのぼらないもの。死。

家族や友人、虫の死を通して「死ぬ」とはどういうことなのか、引いては「生きる」とはどういうことなのかを見つめた短編集。

中でも、「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」のフレーズから始まる『桜の樹の下には』に描かれる強烈な死生観に打ちのめされた。

桜の美しさを信じられず、不安になった「俺」はなぜ桜が美しい(と我々は感じるのか)を考える。そしてその理由は樹の下に屍体が埋まっているからと結論づける。

生きることと死ぬことの切り離せないつながりを激烈に突きつけるこの作品はうさぎの死生観の軸となっている。

 

a.r10.to

 

■『日本人はなぜ「さようなら」と別れるのか』竹内整一

一般に世界の別れの言葉は「神の身許によくあれかし(Goodbye)」や「またお会いしましょう(See you again)」、「お元気で(Farewell)」のいずれかの意味合いである。

日本語の「さようなら」は、世界的に見ても稀な類型なのだが、なぜ日本人は「さようなら」と別れるのか。

「さようなら」を通じて、日本人は別れとどう向き合い、受けとめてきたのかを探る。

人生には「あかぬわかれ」と向き合わなければならないときがある。後ろ髪を引かれながら別れなければならない。どうしても別れを避けられないのなら、せめて何か、意義のあるものに—。

普段何気なく使う言葉だからこそ、きちんと相手を見て「さようなら」と伝えることの大切さを学んだ一冊だ。

 

a.r10.to