本読むうさぎ

生きるために、考える

エッセイ

バスにて

バスで、運転手の後ろに座っていた。 停留所に着くと、学生服の男の子が「ありがとうございました」と降りていった。 バスは発進した。 しばらくしてまた停留所に着くと、若いサラリーマンが「ありがとうございました」と降りていった。 バスは発進した。 次…

所信表明

自分の書きたいことと 人が読みたいと思うこと できればこの二つを折り紙の角と角を合わせるように ぴたりと重ねたいのだけれど そうそううまくはいかない かといって 当たり障りのないことを 耳障りのよいことだけを 書きたいとは思わない 書くとは 表現す…

「やあ、こんばんは」

夜になると蛙が鳴くようになった。 「やあ、こんばんは」 「やあやあ、最近どうだい」 「さっぱりですな。お先真っ暗だよ」 「どこもそんな感じさね。おや、上を見てごらん」 「上に何があるってんだい」 「星だね。今日はよく見えるよ」 「星か。星はいいね…

眠るまでの

目を閉じ、眠りに落ちるまでの束の間。 「思考」と呼ばれる前の茫としたナニか。 が、頭を駆け巡る。 水を得た魚のように、陽に誘われた虫のように、ゆらゆらふらふら ときに激しく、ときに静かに。 死んだように動かないかと思えば、今命を吹き込まれたよう…

ある一日のはじまり

魚を焼いて食べる。 塩気と脂を緑茶で押し流す。 食道を伝って胃へ広がっていく。 三月の朝日が差し込んでいる。 どうしようもなく春だ。 ランキング参加中短文エッセイ ランキング参加中ライフスタイル

老いるとは老けることではない

園児たちの寝息を聞きながら、老いへの恐怖に一人震えていた。 保育園の頃の話だ。広間で雑魚寝しているときにふっと不安が湧いた。 寝ているうちに家族が死んでしまったらどうしよう。 一度抱いた不安は消えるどころか、とりとめもなく広がっていく。 この…

追い求める豊かな言葉

書くのは魚を手で掴まえるようなものだ。 頭の中に言いたいことがある。魚影のように黒くほのかにとよぎっていく。 どうにかそれを掴み、文章の上に載せようと試みるが、それはゆらりと身をくゆらせ逃げてしまう。後を追いかけ追いかけかき乱すうちに言いた…

我慢と努力をはき違えていないか

ものの本にこんなことが書いてあった。 人は努力と我慢を混同します。 我慢は努力ではありません。 我慢はあなたの思考が生んだ不安です。 似た話ならほかでも読んだし、聞いたりもした。 しかし、今のうさぎにはこの言葉が響いた。 人は今しか生きることが…

書くことと夜の関係 月夜にボタンを拾う

本で、テレビで、SNSで、中吊り広告で、日常のいたるところで、文字を見ない日はありません。文字を見るということは、それを書いた人がいるということ。そういえば、「書」の成り立ちはどうなっているのだろうと検索してみると、「手に筆を持つ様子(聿)」…

春が来たからウグイスが鳴くのか、ウグイスが鳴くから春が来るのか

かゆい。かゆくてたまらない。少しかいたらもっとかゆくなった。 久々の晴れだから散歩に出た。桜の薄桃や梅の鮮やかな赤を遠くに眺めながらゆらりゆらり歩いていると目の周りがかゆくなった。 花粉だ!と気づいたときにはもう遅い。目と鼻をぐじゅぐじゅに…

怖さの中の神秘

怖い花がある。 落ちた花があまりに鮮やかで、まるで生首のように見つめてくる気になる。 怖い怖いと思っていても、道ばたの生け垣や公園の花壇に植わっているのを見つけると、「あ、椿だ」と引き寄せられる。怖いもの見たさというか、怖さの中に、人を引き…

スマホ時代に失われた手の魅力

ふとした瞬間に思わず見入ってしまうことがあります。顔にかかった髪をかき上げたり、鏡の前でネクタイを締めたりする姿に色気を感じるのには、手が重要な役割を果たしています。心情を表すときに靴ひもを結んだり、煙草に火を点けたりするのも、手に焦点が…

坂の上の雲と坂の下の穴ぼこ モノを手に入れる生き方とは

見渡してみると私たちの身の回りはなんとまあモノで溢れていることでしょう。 モノを手に入れることにあくせくして、さて、手に入れた後はどうでしょう。 壊れたらすぐ捨てたり流行の先端を求めたりして、モノと添い遂げるということはすっかりなくなってし…

たあいもない話

こんな話をした。 桜が咲いたから春が来るのか、それとも春が来るから桜が咲くのか。 冬が、終わろうとしている。 ランキング参加中ライフスタイル ランキング参加中雑談・日記を書きたい人のグループ

森にパンを落とすように

特別お題「わたしがブログを書く理由」 人は迷う。 今日の服装から人生の伴侶まで、大小さまざまに、絶えることなく。 人は死ぬまで森をさまよっているのかもしれない。 迷いをなくす方法はないが、迷いにくくしたり、迷ってもすぐに正しい道に戻ったりする…

軸となる言葉を持つ

プロジェクションマッピングで絵画の世界に飛び込むという企画展に行ったときのこと。部屋にはクッションが置いてあり、寝そべられるようになっており、観客は横になったり、歩き回ったりして思い思いに作品を味わっていた。クッションを枕に絵画の世界に浸…

仕事終わりのコーヒー、おともはチョコパイ

仕事に復帰してようやく一段落ついた。毎日こんなにへとへとになっていたっけ。 職場環境は相も変わらず、何周遅れかというほど時代遅れなことをしている。人がいいだけに、いつ誰が潰れてもおかしくない状況。 家に帰って久しぶりにコーヒーを淹れた。おと…

自分で自分にグッドを

ブログ1年生から進級するまで1週間となりました。 今まで書いた記事を読み返してみると文章の拙さに目眩を覚えます。 本当に自分が書いた文章なのか、これは。 1年経っても大して成長しない書く力。下手の横好きなのか大器晩成なのか。剣山のような道のり…

冬のナマズみたいに

心の体力というか、行動のキャパシティーが低い。 お買い物に出かけた後は家でぐったりと疲れ果て、小一時間動けない。 人と会えば次の日は一歩も外に出ないなんてこともざらにある。 ランニングや山登りをしているので体の体力(変な言い回しだが)には自信…

イーサン・ハントも顔負けの通院

梅雨入りを祝うかのように朝から激しく降っていました。 一歩も家から出たくなかったですが、心療内科に通う日だったのでしぶしぶ支度にとりかかります。 病院の先生が苦手で、できるだけ避けていたので気分は二重に重い。行けばどうってことないのはわかっ…

5月最後の金曜日。乾杯

花に季節の移ろいを見る。 梅が香り、桜はまだかと心待ちにしていたかと思えばツツジが鮮やかに花開いた。 アザミがささやかに咲き誇る片隅で雨待ちのアジサイが空を見上げる。 5月最後の金曜日。プレミアムフライデー。 今年も折り返しを迎えようとしてい…

私に必要なものは

肩肘張らないと生きていけないのに肩肘張ったままでは息が詰まる。 よりよく生きるために頑張っているはずなのに生活にゆとりを持てない。 私に必要なものは、たくさんのお金でも便利な道具でもなく、一回の深呼吸をする余裕かもしれない。 余裕がないと感じ…

今日はよく生きた

5月の山は緑と白に埋め尽くされる。草木は少しでも陽を浴びようと枝を伸ばし、葉を広げる。葉を照らす陽が白く跳ねる。 万緑の中や吾子の歯生え初むる 中村草田男 万緑は草木が辺り一面に広がる様子。草木の生命力と歯が生え始めた我が子の生命力が重なる。…

オトコノコよ、準備はいいか

今週のお題「レイングッズ」 水たまりは踏まねば無礼というもの。大きいのも小さいのも、深いのも浅いのも一踏みもせず行き過ぎないのではのオトコノコの名折れだ。 よりよい一踏みを行うには準備が大切だ。特に長靴には細心の注意を払わなければならない。 …

コーヒーを淹れる

電気ケトルのスイッチを入れてマグカップを取り出す。縁にかけた豆の乾いた匂いが鼻先をくすぐる。豆の空気が鼻腔を通って肺に満ちていく。長く深いため息とともに肺に溜まっているものを出し切ると体が生まれ変わったように感じる。 空気の入れ替えを繰り返…

母の日に贈る難問

悩みの種の母の日が近づいている。 毎年毎年何を渡すかで頭を悩ませる。 毎年カーネーションを贈っているが、さすがに同じものばかりでは芸がないというか、考えるのをサボっているように思われないか心配になる。 かといって花以外となると何がいいのだろう…

白のイメージ

5月も中旬に入り、緑はいよいよ青く、陽はますます高くなりました。 色が持つイメージは人それぞれあるかと思います。 情熱は赤、冷静の青、元気の黄色、癒しの緑…… 幼い頃に見た戦隊ヒーローに影響されているんでしょうかね。 それは置いておいて、うさぎ…

駄文や乱文の先に道があると信じて

「この書き方好きだな~」と思う文章と出会ったらマネしたくなるもの。 プロ野球選手のスイングを見よう見まねに練習する球児の気持ちでマネしている。 「学ぶ」は「真似る」からきているというが、人間とは不思議なもので、マネするうちに少しずつ型を覚え…

可愛らしいお遊戯

出かけるときはカバンに本をしのばせている。 読む読まないは別として、「手を伸ばせばある」という安心感が心地よい。 今日は出かけてから本を忘れたことに気づいた。 空き時間ができたのでカフェに入ったが、さて、することがない。 SNSやメールのチェック…

他人の人生

小学生の頃、伝記にハマった時期がある。 野口英世、エイブラハム・リンカーン、H・C・アンデルセン、アルフレッド・ノーベル…… 学校の図書館にあった「世界の伝記」シリーズをパラパラめくっては、努力を重ね、逆境を乗り越え、誰かのために身を捧げた人た…