5月の山は緑と白に埋め尽くされる。草木は少しでも陽を浴びようと枝を伸ばし、葉を広げる。葉を照らす陽が白く跳ねる。
万緑の中や吾子の歯生え初むる 中村草田男
万緑は草木が辺り一面に広がる様子。草木の生命力と歯が生え始めた我が子の生命力が重なる。
寺山修司は『五月の詩』で「僕の季節の入口」に立つ新しい「僕」の喜びを叫んでいる。
二十才 僕は五月に誕生した
僕は木の葉をふみ若い樹木たちをよんでみる
いまこそ時 僕は僕の季節の入口で
はにかみながら鳥たちへ
手をあげてみる
二十才 僕は五月に誕生した
うずまき、とどろき、弾けるエネルギーが古い身体や精神を突き破る。陽を求める葉のように外へ外へ広がっていく。
5月、どうしようもなく生きようとする季節。
今日はよく生きた。明日もよく生きたい。