本読むうさぎ

生きるために、考える

軸となる言葉を持つ

プロジェクションマッピングで絵画の世界に飛び込むという企画展に行ったときのこと。部屋にはクッションが置いてあり、寝そべられるようになっており、観客は横になったり、歩き回ったりして思い思いに作品を味わっていた。クッションを枕に絵画の世界に浸っていると、目の端に影がちらついた。若い二人組の女性がポーズをとって写真を撮っている。撮影は許可されているので問題はない。終わったら元の位置に戻るだろうと気にしないことにした。ところがしばらく経っても影は動いている。SNSに挙げるのか、ポーズを変えたり二人で撮ったりと絵画をまったく見ていない。撮り終わったかと思えば写真写りをチェックしてまた撮り始める。部屋を出るまで絵画を見ることはなかった。騒々しいわけではなかったが、慎みのない行動に辟易してあまり楽しめなかった。

 

うさぎにとって「慎み」や「沈黙」、「静か」といった言葉はとても心地がいい。それらはそのまま物事への接し方や態度にもかかわっている。人でごった返すテーマパークよりも閑静な美術館を見て回るのが好きだし、みんなと一緒になってはしゃぐよりもみんなを遠めに見るのが楽しい。人や物との心地よい距離感がわかるようになって少し生きやすくなった。

 

自分の生き方や価値観を表す言葉を持つことで、自分の軸が鮮明になる。何に関心があるのか、何を大事にしたいのか、引いてはどう生きたいのかにつながる。軸がない人生は周りに振り回されるばかりだ。地に深く根差す軸を、生きる指針を、私たちは持たなくてはならない。