本読むうさぎ

生きるために、考える

今日の私に贈る詩

今日もおつかれさま。

今日は吉野弘の『生命は』を贈ります。

 

生命は

自分自身だけでは完結できないように

つくられているらしい

花も

めしべとおしべが揃っているだけでは

不充分で

虫や風が訪れて

めしべとおしべを仲立ちする

 

生命は

その中に欠如を抱き

それを他者から満たしてもらうのだ

 

世界は多分

他者の総和

しかし

互いに

欠如を満たすなどとは

知りもせず

知らされもせず

ばらまかれている者同士

無関心でいられる間柄

ときに

うとましく思うことさえも許されている間柄

そのように

世界がゆるやかに構成されているのは

なぜ?

 

花が咲いている

すぐ近くまで

虻の姿をした他者が

光をまとって飛んできている

 

私も あるとき

誰かのための虻だったろう

 

あなたも あるとき

私のための風だったかもしれない

 

誰かの一言に傷ついたり、嫌な思いをした。今日の私にとって、その人は虻のように見えたかもしれない。

また一方で、私の一言に傷ついたり、嫌な思いをした人もいたかもしれない。誰かにとって、私は虻のように映ったかもしれない。

 

でも

 

後で振り返ったときに、あの言葉に励まされた、支えられた、ということがあるかもしれない。顔も名前も忘れてしまった人だけれど、言葉が、胸をじんわりと包み込んでくれる。そんな思いをしたことはなかっただろうか。

同じように、私の言葉に救われる人もいるかもしれない。ちょっとしたつぶやきが、水紋のように広がって、心を震わせる。そんなことがあったかもしれない。

私の欠如を満たしてもらうとともに、誰かの欠如を満たしている。

 

今日、私が傷ついたことにも意味はあるのかもしれない。

今日、誰かを傷つけたことにも意味はあるのかもしれない。

そんなことを考えます。

 

a.r10.to

 

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