今の私は、明日の私とは違う。私は、毎瞬変化している。だから、書くこともまた、今にしか行われ得ない一回きりの営みになる。意識するかしないかは別にして人は、いつも、今しか書くことができない言葉を生み出している。(あとがきより)
生きているとダメダメ期とでも呼びたい時期がある。
みんなが明るい陽の下を歩く中、自分だけが暗い不幸の底を歩いている気がする。
そんなときに思い出す言葉だ。
どんな一日であっても、二度と繰り返すことのできない、また、誰も代わることのできないものである。
古今東西どこを探しても今日を語れるのは私だけ。
今日残した言葉がいつか私を救うかもしれないし、誰かを支えるかもしれない。
誰一人として私の顔も名前も知らない世界になっても、ここに残った言葉で誰かとつながるかもしれない。
仕事道具や脱いだシャツが散らばる狭い部屋で一人、画面を眺めている。マグカップには飲みかけのコーヒーが冷たく忘れられている。その人は私の言葉を見るともなしに見ながら今日を思い返している。読み終えたその人はベッドに横たわりしばらく天井を眺めていたが、いつの間にか眠ってしまう。目覚めたときにどこか軽くなっている気がする。カーテンを開けて一つ伸びをしながら今日もがんばろうとつぶやく。
そんな妄想にふけってもいいだろう。
「今しか書くことができない言葉」が私を救う。そう思い込んで今日も綴る。