何かを語るというのは、何かを語らないということ。
真っ白な雪原をどんなに走り回っても踏み残しがあるように、言葉をどんなに尽くしても言い表せない部分は残る。
足跡だらけの雪原から真っ白な頃の美しさが失われるように、言葉を重ねれば重ねるほど神秘は損なわれる。
語りたかった神秘は、語られなかったものの中にこそある。
今、目の前に雪原が広がっている。誰一人として足を踏み入れたことのない、どこまでも白い雪原。
その美しさを語り尽くすことができないのなら、沈黙しなければならない。みだりに言葉を吐いて足跡をつけてはならない。
何かを語るとき、自分はその神秘を汚しているのだということを忘れてはならない。