詩の表現の目的は単に情調のための情調を表現することではない。幻覚のための幻覚を描くためでもない。同時にまたある種の思想を宣伝演繹することのためでもない。詩の目的は寧ろそれらの者を通じて、人心の内部に顫動する所の感情そのものの本質を凝視し、かつ感情をさかんに流露させることである。
詩とは感情の神経を掴んだものである。生きて働く心理学である。
『月に吠える』序より
噛めば噛むほど味わいの出る詩人、萩原朔太郎。彼の代表的な詩集を収めています。
第一詩集のはじめに詩とはどういうものか、詩人の言葉で説明されています。
この部分だけでも十分に噛み応えがあります。文字としての意味だけでなく、文字の向こうにある詩人の姿に思いを馳せることで、より理解が深まると思います。
詩という表現方法で彼は何を試みたのか、「生きて働く心理学」とはどういうことか。
詩に並べられた言葉を読みながら、その奥にある何かを見つめる。それが、読書生活を、引いては人生を豊かにするのでしょう。