小さい頃から本屋で働きたいと思っていた。
本に囲まれた生活。毎日のように新しい本、初めての本と出合う生活。好きなものに囲まれた生活。想像するだけで心がふわふわした。
あれから20年近く経つが、本屋で働く機会には巡り合えていない。
現実の仕事や生活が目まぐるしく、本屋への憧れを思い出すことはほとんどない。
それでもたまに、店員のエプロン姿を見たとか、本の場所を尋ねたとか、何てことのない、些細なきっかけで少年時代に戻ることがある。
自分がエプロンをつけたらどんな感じだろう、本について尋ねられたらどう答えるだろう。
幼い「たられば」を夢想し、こっそり顔を赤らめる。こんな経験は誰もがあるのではないか。
実際に働いたとしたら、思っていたよりも地味で、嫌なことだらけで、投げ出したいことだらけなのはわかっている。
もしかしたら本が嫌いになるかも知れない。
本なんか読まなくなるかもしれない。
それでも、なのか、それだから、なのか、好きなことを仕事にしている自分はどんな姿なのかを考えないではいられない。
身の回りで転職をする人が多い。
20代も後半に差しかかり、生き方を見つめる機会が増えた。
やりたいことで働こうと動いている人たちを見て、「自分はどうする?」と問いかけることが増えた。
本屋で働く、それでなくても、本と関わる仕事をする。
「自分はどうしたい?」
幼いうさぎが問いかけてくる。
まだ、答えられない。