本読むうさぎ

生きるために、考える

笹舟のような私だから

人生うまくやろうなんて、利口ぶった考えは、誰でも考えることで、それは大変卑しい根性だと思う。繰り返して言う。世の中うまくやろうとすると、結局、人の思惑に従い、社会のベルトコンベアーの上に乗せられてしまう。一応世間体もよく、うまくはいくかもしれないが、ほんとうに生きているのではない。流されたままで生きているにすぎない。

岡本太郎『自分の中に毒を持て』

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できるだけ苦労を減らそう、楽に生きようと考えるのが人間。楽な生き方とは、何も考えず、何もせず、周りと同じようにやり過ごすこと。しかしそんな生き方は自分を生きていると言えるだろうか。

易きに流れず、自分を貫く。苦労や困難と闘うことこそ、本当に生きていると言える。

 

と、言葉ではわかっても、自分の身に置き換えるとできなくなるのが人間だ。強く生きよう、たくましく生きようと思う。いろいろな人の話を聞いたり、本を読んだりする。魅力的な言葉や考え方と出会う。ぜひ自分に取り入れて、これから実践しようと思う。でも日常を生きるのを手いっぱいで、また元の自分に戻ってしまう。それを繰り返してしまうのが人間だ。

強く生きたい、でも強く生きられない。理想と現実に挟まれてくるくる回る笹舟が私だ。

 

理想の生活や自分の姿がある。こう生きられたらいいな、こんなことができたらいいな。目を開けたまま夢を見る。そしてふと現実に目が向く。山積みの仕事や面倒な人間関係を思い出して憂うつになる。誰もが一度は経験したことがあるだろう。

こうすれば理想を叶えられるという近道はない。悩んでもがいて苦しんで、後で振り返ったら道になっているだけだ。

パリの紋章には「たゆたえども沈まず」という標語が書かれているらしい。氾濫するセーヌ川とともに生きてきたパリの人々にとって、たゆたうことは悪いことでもなんでもなく、ごく当たり前のことだったのだろう。悩んで苦しんで、けれども沈みはしない。波に飲まれることはあるが、また浮き上がる。この言葉を帆に掲げ、今日も笹舟はくるくる回る。

 

a.r10.to