人は生まれた瞬間から死ぬことが決まっている。
特別なことがない限り、人は老いて死ぬ。
生きることは、死ぬこと。老いることは、死ぬこと。
どう老いるかを考えることはどう死ぬかを考えること。つまり、どう生きるかを考えることにつながる。
ところで、「老」という字には「おいる」と「ふける」の2つの読み方がある。「おいる」は歳を重ねるという状態の変化を意味するが、「ふける」は歳を重ねることに加え劣化するという、状態の悪化も意味しているように感じる。私は、果たしておいているのだろうか、ふけているのだろうか。
美しく老いたい。
見た目の話ではない。
葉一枚でもそこに落ちるのをためらうような、静止した湖面の心。
声高な業突く張りでも、こびへつらう卑俗でもなく、静かに立つ一本の柳の心。
何ものも拒まず、ゆったりと、ゆっくりと受け入れる御空の心。
そんな美しい人になりたい。