本読むうさぎ

生きるために、考える

心のエネルギーを

新年度、新天地、新生活……「新」には力が生き生きとみなぎるイメージがあるが、逆を言えばそれだけエネルギーを必要とするということでもある。

生きるにはとにもかくにも、エネルギーが必要だ。

 

海原を泳ぎ回る魚はもちろん疲れるだろう。ときには流れに逆らったり、天敵から逃げたりすることもあるからだ。だが、流れに飲まれないよう底に貼り付いている海草だって疲れる。じっと根を張って今日という荒波に耐えるだけで身も心も疲れるものだ。

「自分のペースで生きる」とはよく聞くフレーズだが、「自分のペース」とはどういうことだろう。同居人がいる人は、相手の都合に構わず自分のやりたいように過ごしているというのか。一人でいるにしたって、仕事の締め切りだとか、役所への届け出だとかの期限が迫っているときに「自分のペースで」なんて言っていられるだろうか。

実際の生き方ではなく、気持ちの持ち方かもしれない。現実は忙しいけど、せめて心の中だけはのんびり、何者にも縛られずにいたいという願望。数日ならそのような生き方もできるかもしれないが、ずっとは続くまい。現実と心で流れる時間の速さが違うのだから、いつかギャップに耐え切れなくなるのは目に見えている。

「自分のペースで生きる」というのは極めて短期的、局部的な生き方であって、ずっと続けられるものではない。

生きるにはエネルギーが必要だ。身体は食べれば動くが、心はそうもいかない。心のエネルギーを満たすにはどうすればいいだろう。持続可能な心のエネルギーを求めているのかもしれない。