本読むうさぎ

生きるために、考える

自分に軸を置く 受信力

 

いつでも、どこでも、何をしていても、ありとあらゆる情報を手に入れられる今の時代。

一般の方でも発信が爆発的に拡散され、インフルエンサーと呼ばれる影響力を持つ人も少なくありません。誰もが手軽に情報を発信、入手しやすくなりました。

それはもちろん素晴らしいことなのですが、一方で、偏った情報や人を貶めるような投稿も多く見られます。

発信することの重大さがあちこちで叫ばれる中、受け取る力、受信力の重要性がさっぱり抜け落ちている気がします。

 

詩人の長田弘は『なつかしい時間』で現代の受信力の衰えについてこう述べています。

 

他者の発しているシグナル。他者の求めているコミュニケーション。他者の言葉。他者の沈黙。そうした他者の存在というものを、自分から受けとめることのできる確かな受信力が、ずいぶん落ちてしまっているのではないか。そしてそうした受信力の欠如が、今では、社会の在り方を歪ませるまでになっていないか、どうなのか。

 

「他者」と「自分」の存在を区別し、強調しているのは大事な指摘です。

発信には必ずそれを行った「他者」がおり、伝えたい思いや、受け取った相手にこうなってほしいという意図が込められています。

受信とは単に情報を受け取ることではなく、「他者」の存在を「自分」の中に受けとめること、「他者」の輪郭を「自分」に刻むことです。

 

受信力が衰えると「大切なものを自分に受けとめて、自ら愉しむ」ことができなくなると長田は言います。

気づけばSNSを何時間も見ていて、無駄な時間を過ごしたと後悔するのも、何が「自分」にとって大切なのかがわからなくなっているからではないでしょうか。

楽しもうとする積極的な態度ではなく、楽しませてくれるのを待つ消極的な態度だから、心から楽しむことができない。発信が上滑りしている感覚になる。

 

受信力を高めるには発信を引っかける「弁」をつくってやることが大切です。

投稿を見たときに「この人は何でこれを発信しようと思ったのだろう」と考えたり、「自分だったら発信するかな、するとしたら、どう発信するかな」と自分に置き換えたりする。

 

毎日何千、何万もの発信が飛び交う情報社会だからこそ、「自分」に軸を置く受信力を大切にしていきたいものです。

 

a.r10.to