本読むうさぎ

生きるために、考える

ハンカチが、大人の証なのかもしれない

公衆トイレで手を洗いながら、ハンカチを持ち歩くようになったのはいつからだろうと

考えた。

 

小学校。生活係だか保健係だかの女の子がハンカチを持ってこようと呼びかけていたような気がする。意欲喚起の手書きポスターが張られていたようにも思う。

毎年、少数ではあるが風邪やインフルエンザが流行り、そのたびに学級閉鎖にならないかと期待に目を輝かせていた記憶はある。

しかしハンカチを学校に持っていった記憶はとんとない。

手を洗ってもぺっぺっと払って自然乾燥、またはズボンにすりすりとこすりつける。うさぎだけでなく周りの男子も同じようにやっていたからハンカチの所持率は相当低かったろう。係の女の子がかわいそうだ。

 

中学校。同上。

 

高校。イケテルボーイがハンカチを使っているのを見てかっこいいと思う。月に数回持っていく。

 

転機は大学。地元を離れ一人異郷の地での新生活。

生活習慣がいろいろ変わったが、その中の1つがハンカチを持ち歩くことだった。

理由は特にない。たぶん荷物に未開封のハンカチが紛れているのを見つけたから持ち歩いたとか、そんな感じだったと思う。

持ち歩くようになると、それまで持ち歩かなかったことが不思議なくらい手放せなくなった。

手を洗った後にぺっぺっはまだしも、ズボンにすりすりだなんて不衛生はなはだしい!

手にズボンの汚れがつくし、ズボンも濡れてよれてしまうじゃないか!

それに見た目もださい。

いい年した人がぺっぺっやズボンすりすりなんてしているのを見るとなんかもう、うわあと思うようになった。

「この人の衛生感覚はこれくらいなんだ」と見るようになった。

人をそんな目で見るということは、自分も人から見られるということ。

今までいろんな人からうわあという目で見られていたのかと思うと背筋がぞわぞわした。

 

それから外に出るときは必ずハンカチを持ち歩いている。ズボンの左ポッケが定位置だ。

たまに持ち歩くのを忘れることがあるが、その時は一日をやり直したくなる。

食事の後に歯を磨くくらい、ハンカチを持ち歩くのは習慣となった。

 

 

人間、どう変わるかわからないものだ。

ズボンすりすりボーイがハンカチないと落ち着かないマンになるなんて。

ハンカチを持ち歩くようになったときが、大人に近づいた証なのかもしれない。

 

そうか、おれも大人になっていたんだな。

笑みを浮かべて左ポッケに手を入れる。

ハンカチはない。

 

 

プレゼントでハンカチをもらったら嬉しいけど、使うのがもったいないなくてなかなか使えない。

開封のハンカチが溜まってきているのでなんとかしないと。

a.r10.to