ニッチな話。
『MONKEY』という文学誌を読んでいる。
定期購読ではない。書店で、文学誌コーナーにひっそりと積まれているのを買う。
翻訳家の柴田元幸さんが編集を務めており、毎号のテーマに沿って国内外の短編や詩が載っている。
絵画も載っているので、読むのもいいし、眺めるのもいい。個人的にすごく好きな文学誌だ。
まず文学誌というものを周りで読んでいる人なんていない。
学生のころにかっこつけて買ったのが始まりだが、周りに「おれこんなの読んでるんだぜ」と吹聴するのは余りに恥ずかしいから、誰にも紹介したことはない。かっこつけるために買ったのに、誰にも見せていないとは本末転倒もいいところだ。
そんな不純な理由で買ったが、買ったからには読んでみる。なんせ一冊千円以上だ。少しでも元を取らねば旅立った英世たちも浮かばれない。
国内外の短編、詩など合わせて20ほどの作品が載っている。順に読んでみる。
パラパラめくって目についたものから読む。短いものだと10分ほどで読み終わる。もう一作品、次はもう少し長いものを読んでみようか。おや、詩も載っているな。海外の詩か。知らない名前だな。はじめまして。日本の作家も載っている。おや、この人は知っているぞ。どれどれ。
なんてやっているとあっという間に1時間も読みふけっていた。何だ。おもしろいな。
それからふとしたときに書店で探すようになった。
見つかれば気分によって買うときもあるし、買いたいときに限って見つからないものだ。
定期購読はしない。黙っていても手元に届くのは、なんか、違うのだ。自分のものという実感がしない。ふらっと立ち寄って、手に取って、ほしいと思ったら買う。これが書店の楽しみではないか。
今では文学誌を持ち歩くこともある。カフェでパンケーキをほおばる横で文学誌を広げるのだ。変な奴だ。ノートに必死に計算をしている傍らで猿の表紙がちらつくのだ。うっとうしいだろうな。すまんな。でも読むのが楽しいのだ。
いまだに人に紹介したことはない。見せびらかすわけではないが堂々と読んでいる。文庫本とはまた違った魅力がある。
わかる人に伝わればいい。文学誌、おもしろいぞ。