本読むうさぎ

生きるために、考える

自然と親しむとは


「自然に触れる」「自然に親しむ」という表現がどうにも好きになれません。

「触れる」とか「親しむ」というと、どうにも、自然と人間が対等のような気がするからです。

「自然を大切にしよう」とか「自然を守ろう」というのもおかしな話で、自然は人間に守られる存在ではないし、コントロールできるものではありません。

それを、私たちの努力次第でなんとかできると考えるのは、なんとも、傲慢な態度ではないでしょうか。

私たちは自然の一部であり、オフィスビルに詰め込まれたり、満員電車に揺られたり、それらも含めた、私を取り囲むすべてが自然です。

 

わざわざ「自然に触れる」なんて言わなくても、私たちは自然の中に生きています。

わざわざ部屋を植物で飾りつけたり、花見スポットに出かけたりしなくとも、私を取り囲んでいるものに目を向ければ、それで十分なのではないでしょうか。

 

私たちが見失っているのは、私は自然の中に在る、という感覚なのではないかと思います。

川崎洋の『ウソ』という詩にこんな一節があります。

 

そこで私はいつも

水をすくう形に両手のひらを重ね

そっと息を吹きかけるのです

 

何が本当でどれがウソかわからなくなったとき、自分の息のあたたかさだけは本当であると確かめる。

そんな、今の私を、あるがままの私を受けとめる姿勢をもつことができたら。

より深い意味で、「自然と親しむ」ことができるかもしれません。