まだかまだかと気を揉むうちに花盛りを逃してしまい、葉桜ばかりとなった。
盛りの頃には桜を見上げる人をよく見かけたものだが、今では皆うつむいて行き過ぎている。
人の心変わりの早さを感じと同時に、うさぎも見上げることがなかったことに気づいた。
葉桜や
足止めながむ
人もなし
桜の樹の前に立つ。葉は青々と光を受けている。なごり雪ならぬ、なごり桜が数枚、青々とした葉に隠れている。
見るからわかることがある。見なければわからない。見るためには立ち止まる必要がある。
人の心の動きなど素知らぬ顔で、桜は立っている。