本読むうさぎ

生きるために、考える

『葬送のフリーレン』から考える「大人とは何か」

小学館から出版されている『葬送のフリーレン』(原作:山田鐘人 作画:アベツカサ)は魔王を打ち倒した勇者一行のその後を描いた作品だ。勇者一行の一人で、1000年以上生きる魔法使いフリーレンは「人間を知る旅」に出る。様々な人との出会いや別れを通じて今を生きる者たちと親睦を深めたり、今は亡き者たちを思い出したりする。

 

『葬送のフリーレン』ではたびたび「大人とは何か」について描かれる。1000年以上生きるフリーレンだが、人の心の機微に疎かったり、宝箱に目がなかったりなど、子どもっぽい一面もある。(本人は自身を大人と思っているところも子どもっぽい)

フリーレンは旅の途中、かつて勇者一行として共に旅をした旧友ハイターを訪ねる。老成した彼を大人っぽくなったと評価するフリーレン。しかし彼は心は子どもの頃からほとんど変わっていないと告げ、次のように語る。

 

『葬送のフリーレン 第29話』より

 

理想の大人を目指し、大人のように振る舞ってきたハイター。では「理想の大人」とは何だろうか。

ハイターはさらに続ける。

『葬送のフリーレン 第29話』より

子どもの心の支えになるのが「大人」だが、その心は子どもの頃と変わらないという。子どものために存在するということは、裏を返せば子どもがいないと存在できない。

大人というモノがそこにいるわけではない。子どもの理想を叶える人が「大人」と呼ばれるのだ。

では、子どもの理想を叶えるために必死に努力してきた大人を誰が褒めてくれるのだろうか。

 

『葬送のフリーレン 第29話』より

 

人は成長したら大人になるものと漠然と考えている。

実際は大人になるよりも大人をすると言った方がいいのかもしれない。

大人の振りをして、大人をしてきた人は、誰から認めてもらえばいいのだろうか。

 

大人と呼ばれる年齢になった。子どもの頃よりもできることが増えた。でも、幼い頃に思い描いていた大人にはまるで及ばない。大人というのは、もっとかっこよくて、賢くて、頼りになるものだ。大人に憧れる私はまだ子どもなのだろうか。

私も死ぬまで大人の振りを続けるのだろう。子どもの心の支えとなるために。私もいつか、褒められるときがくるのだろうか。

 

a.r10.to

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