本読むうさぎ

生きるために、考える

地球儀を回すように生きる

米津玄師が映画『君たちはどう生きるか』のために書き下ろした『地球儀』。

映画のタイトルにもあるように、これからをどう生きるかに対しての一つの答えを示しているように思う。

映画を観た後に聞くと場面や登場人物とも絡めてより深く味わいがでる。

 

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サビの最後に「地球儀を回すように」という部分がある。

「どう生きるか」という問いに「地球儀を回すように(生きる)」とはどういうことかを考えてみた。

 

サビの歌詞は次の通りだ。

風を受け走り出す 瓦礫を越えていく

この道の行く先に 誰かが待っている

光さす夢を見る いつの日も

扉を今開け放つ 秘密を暴くように

飽きたらず思い馳せる 地球儀を回すように

米津玄師『地球儀』

 

扉を「開け放つ」、秘密を「暴く」、地球儀を「回す」というように、「手」の表現が多く使われている。(暴くはもともと、土を掘って物を取り出すという意味がある)

手は意志が最も強く表れる部位だ。気がついたら勝手に歯を磨いていたなんてことは寄生獣が取りつくなんてことがない限り起こらない。手は自らの意志が反映している。自ら選択したことを強調するために、手の表現が多く使われているのかもしれない。

扉は外部を遮断するために取りつけるもので、物理的な意味だけでなく精神的な比喩としてもよく使われる。「扉を開け放つ」とは身体的に建物の外に出るだけでなく、自らの過去や抱える傷などの秘密を伝えるという内面の変化も表している。

それだけでは満足せず、さらに「思い馳せ」ている。過去や未来、生や死を越えて、今は会えない人に向けて想像を巡らせる。地球儀を回してどんな場所へも一瞬で思いを巡らせるように。

世界に向けて心を開き、もう会えない、まだ会っていない誰かを想像しながら生きる。周りに流されるのではなく、自らの意志で、手で選択して生きていく。そのような態度を『地球儀』は示しているのではないだろうか。

 

歌の解釈は人の数だけある。自分の解釈が正しいとか優れているといったことに興味はなく、自分の解釈を書き残しておきたかった。あわよくば、記事を読んでくださった方の解釈の一助となればいい。今日も自らの手で、地球儀を回して生きていきたい。