本読むうさぎ

生きるために、考える

窓から夕立を待つ

今週のお題「変わった」

 

アパートに引っ越した。

徒歩圏内に動物園があるため、辺りは静かでとても過ごしやすい。

この家は東向きに窓が付けられており、そこから辺りの景色をぼんやり眺めることがある。

窓の正面がちょっとしたぬかるみになっており、野生動物たちの憩いの場になっている。

ヒキガエルの子守歌を聞きながら眠りに就き、カモの合唱に起こされて一日が始まる。

差し込む朝日が床を伝って反対側の壁まで白く染める。

目覚めの緑茶が胃に沁みる。

朝は清々しく迎えられる一方で、日照時間は短い。南側が崖になっているせいで陽の光が他よりも早く途絶えてしまうのだ。

窓の外が暗いからもう夜かと思って時計を見るとまだ小学生が帰るくらいの時間だったことがある。

 

梶井基次郎の『城のある町にて』で、夜遅くに主人公が夕立を待つ場面がある。

窓から夜に凝らすと、城を照らす電燈が見える。

虫の声が雨の音に変わる。

足先を雨が冷たく濡らす。

物思いに耽りながら、次の夕立ちを静かに待つ。

 

この家の窓からはどんな夕立が見えるだろう。

夕立を見ながら何を思い、何を考えるだろう。

まだ来ぬ夕立を静かに待っている。

 

a.r10.to