本読むうさぎ

生きるために、考える

2023年に読んでよかった詩『祝婚歌』

人は生きていると徐々に傲慢になってしまうものだ。

「自分は傲慢ではない」と言い切る人ほど視野が狭いものはない。

「自分は傲慢ではない」と思っている時点ですでに傲慢なことに気づいていないのだ。

 

人はどうやって己の傲慢さに気づくのだろうか。

誰かから指摘してもらうか、自分自身の言動を振り返るしかない。

自分自身を振り返るとき、いつも詩が手助けしてくれる。

 

二人が睦まじくいるためには

愚かでいるほうがいい

立派すぎないほうがいい

立派すぎることは

長持ちしないことだと気付いているほうがいい

完璧をめざさないほうがいい

完璧なんて不自然なことだと

うそぶいているほうがいい

二人のうちどちらかが

ふざけているほうがいい

ずっこけているほうがいい

互いに非難することがあっても

非難できる資格が自分に合ったかどうか

あとで

疑わしくなるほうがいい

正しいことを言うときは

少しひかえめにするほうがいい

正しいことを言うときは

相手を傷つけやすいものだと

気付いているほうがいい

立派でありたいとか

正しくありたいとか

無理な緊張には

色目を使わず

ゆったり ゆたかに

光を浴びているほうがいい

健康で 風に吹かれながら

生きていることのなつかしさに

ふと 胸が熱くなる

そんな日があってもいい

そして

なぜ胸が熱くなるのか

黙っていても

二人にはわかるのであってほしい

吉野弘祝婚歌

 

a.r10.to

 

 

 

詩など知らなくても生きられる。しかし、詩を知っていることでものの見方が広がったり、深まったりすることがある。ときには詩が心の拠り所となることもある。

私は傲慢に生きていないだろうか。何かを知った気になったり、誰かよりも偉くなった気になったりしていないだろうか。