本読むうさぎ

人間と名乗るにはまだ未熟なものです。読むことと書くことの波間で遊ぶ一羽のうさぎ

今日の私に贈る詩『表札』

今日もおつかれさま。

今日は石垣りんの『表札』を贈ります。

 

自分の住むところには

自分で表札を出すにかぎる。

 

自分の寝泊りする場所に

他人がかけてくれる表札は

いつもろくなことはない。

 

病院へ入院したら

病室の名札には石垣りん様と

様が付いた。

 

旅館に泊っても

部屋の外に名前は出ないが

やがて焼場の鑵(かま)にはいると

とじた扉の上に

石垣りん殿と札が下がるだろう

そのとき私がこばめるか?

 

様も

殿も

付いてはいけない。

 

自分の住む所には

自分の手で表札をかけるに限る。

 

精神の在り場所も

ハタから表札をかけられてはならない

石垣りん

それでよい。

 

 

日々の中で、どれだけ自分のことを自分で決めているでしょう。

誰にも侵されないはずの名前も、自分の意志で決められない。

手軽に他者の考えを知ることができるようになり、私は、私であることを軽く見るようになったのかもしれません。

 

精神の在り場所に「様」も「殿」も付いてはいけない。

人から値踏みされるものでも、卑下するものでもなく、どこまでも私は私。

石垣りん」が肉体と精神をもった一人であるように、「私」も肉体と精神をもつ一人。

 

今年も折り返し。

熱に浮かれた雑踏のなかにあって。

私の身体で動き、私の頭で考え、私の心で生きる。

これだけは離さないように、固く抱きしめたいものです。

 

a.r10.to

 

 

 

 

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