本読むうさぎ

生きるために、考える

美意識の磨き方:「品」を創るために

「品」という言葉をよく見聞きします。

物の良し悪しを評価するのは「品質」、人の気質を見定めるのは「品格」、オホホと笑うのは「上品」でゲヘヘと笑うのは「下品」と言うように、「品」には常にイメージが伴います。

「品」が呼び起こすイメージは、外見の美しさというよりも、普段はその身に秘めていて、ふとした瞬間に漏れてしまう、滲み出てしまう内面の美しさです。そして内面の美しさとは、何を美しいと感じ、何を正しいと信じるかという美意識を指します。

私たちは本を読んだり人と話したりなど、毎日を送るなかで美意識を磨いています。それはほとんど無意識に行われます。

「類は友を呼ぶ」という言葉がありますが、似た者同士が集まるのは、同じ価値観、同じ美意識を持った人同士が集まることで居心地の良さが生まれるためです。それはそれで良いのですが、いつまでも同じ価値観、美意識を持っていては進展も発展もありません。変わらぬ美意識を5年、10年と持ち続けるのは衰退と同じです。

その綻びが今、いたるところに現れているのではないでしょうか。世を騒がす事件や不祥事の一端は、凝り固まり、淀んだ美意識によるものではないでしょうか。

モノや情報に溢れる今の私たちがもっと目を向けなければならないのは、この美意識だと思うのです。見た目の良さを追い求めても中身が伴っていなければ実にむなしい。上等な靴を履いたところで、足の骨や筋肉が脆弱だと不格好であるようなものです。私たちの体を支えるのが骨や筋肉なら、心を支えるのが美意識です。目に見えるところばかりを気にして、目に見えないところ、それでいて、本当に大事なところをないがしろにしている。そんな世の中になっている気がしてなりません。

美意識は骨や筋肉と同じように鍛えることができます。特別なことをする必要はありません。目に見えるもの、耳に聞こえることに「本当にそれで良いのか?」と問いかけることから始めてみるといいです。自分に何度も問いかけることで、美意識は揺さぶられます。余計なものを削ぎ落としていき、それでも残った「良い」と思えるもの、それがあなたにとって本当に価値のあるものです。そのようにして、本当に価値のあるものを再確認していくことで、「品」は創られます。

何を美しいと感じ、何を正しいと信じるの美意識を磨き、「品」を創る。そういう人が増えると、よりよい世の中になるのだと私は信じています。