今週のお題「試験の思い出」
前の記事とは別の思い出。
うさぎのころはセンター試験で、市内の受験生が一堂に会して試験を受けた。
当日の朝はどんよりと曇っていたような気がする。
試験会場の大学でバスを降りると、黒い学生服がぞろぞろ群れをなしていた。
ぽかんとまぬけに開いたドアにお行儀よく並んで教室に入っていく姿がおもしろかった。
不思議なほどに教室の中での記憶はない。
代わりにトイレがとても印象に残っている。
手汗でびしょびしょになるから休憩時間ごとにトイレで手を洗った。
友人と試験の出来を報告し合いながら、トイレの窓から景色を眺めた。
縦長の窓には通り過ぎる車から山の向こうに広がる空までが一枚の額縁に収められていた。
空を覆っていた暗い雲から冬の陽が差し、並木を歩く人や役目を終え一休みしている畑を白く照らしていた。
なんてことはない、冬の陽。
空から斜めに入ってくる陽を見ていると、不思議と「大丈夫だろう」と思った。
確信は何もないが、たぶん大丈夫だ。
緊張がふっと緩み、浮足立った気持ちがピタッと納まった気がした。
なんてことはない日常の風景に気持ちが安らぐことがある。
それから大事なときや緊張したときには遠くの景色に目を向けるようにしている。