今週のお題「絵本」
長田弘のエッセイ集『なつかしい時間』に、絵本について書かれた一編がある。
「詩人が贈る絵本」という、長田自らが翻訳したシリーズを紹介しながら、絵本とはどのような本なのかについて述べているのだが、「絵本とはどのような本か」という問いはとても興味深い。
絵本について、長田は「言葉と絵の対話からなる本」「色のある本」「独特のかたちをもつ本」の3点を挙げている。
絵本は言葉と絵がセットになっており、言葉と絵を行ったり来たりしながら物語の奥へ入っていく。言葉では語れないコトを絵が語り、絵では伝えきれないコトを言葉が伝える。言葉と絵が別々にあるのではなく、言葉との絵の往復、対話がある本である。
絵には色がある。空の色、雲の色、山の色、表情の色。色それ自体に意味があり、広がりを持つ。色はときに、言葉以上に強くメッセージを届けることがある。
かたちもさまざまで、大きな絵本から小さな絵本、仕掛けがあったり、材質が特徴的な絵本もある。
絵本とは「こころにかたちをあたえる本」であり、「『その本』でなければいけないという本」だと長田は語る。だからこそ、おもしろさや魅力があるのだと。
読み方もそうだ。見る本、触る本であり、声に出して読んだり、黙って読む本でもある。自分に読む本であり、誰かに読んであげる本でもある。
年齢や立場によって、さまざまな接し方ができるのも絵本ならではだ。
長田は絵本の特質は「手わたす」本だと述べる。絵本が与えるのは世界の楽しみ方というより、世界への向き合い方だからこそ、誰が、誰に、どのように、手渡すのか、そこをよくよく考える必要がある、と。
「良い絵本」というものがあるのではなく、人から人へ手渡す、その営みを通じて「良い絵本」となっていくのではないかと思う。
うさぎが覚えている絵本も、その絵本自体の良し悪しよりも、読んでくれる声を聞きながら眠りに就いたり、絵本について語り合ったことが印象に残っている。
手渡すことの尊さを大事にしていきたい。