足だけ見えるカフェがある。
正確には、通りに面した席の、ブラインドが降りて、こちらの視界のほとんどを覆ってしまうため、自然と通りに目が向いてしまい、通りを行く腰から下がちょうど見える、そんなカフェである。
せかせかした足、のんびりとした足、ヒールを履いた足、ランニングシューズを履いた足、頼りない足、子どもの足、スーパーの袋を提げた足、引きずるような足、力強い足。
足を見ているとその人の人生が垣間見える気がしてどきりとする。
どんな靴を履いていて、どんな歩き方をしているのか。通りを歩く人も自分の足を見られているなど思いもすまい。その人のありのままが表れていると言えるかもしれない。
通りを眺めているうちに、ふと、自分の足はどうだろうかと思う。
どんな靴を履いて、どんな歩き方をしているのだろう。
自分の歩き方を見たら、人はどんな足だと呼ぶのだろう。
勘定を済ませ、ドアを押し開ける。
小さく息を吸って、踏み出す。