本読むうさぎ

生きるために、考える

夕日

若者が道を歩いている

頭上では厚い雲の切れ間から陽が差している

一日の終わりを告げる夕日だ

波の立たない穏やかな海に降りそそぐものもあれば

青く遠い秋空に朱を滲ませるものもある

 

だが、若者はうつむいて陽に気づかない

ときおり足を止めてはため息をつく

そうして、またとぼとぼと歩きだす

 

若者の頭上では暮れ行く陽が今日との別れを惜しむように

海を 空を 家を 山を染めてゆく

あらゆるものが陽に燃えている

 

気づけば若者の姿は遠く

もう影との見分けがつかない

重い足を引きずり

どこへゆくのか

 

厚い雲の切れ間から陽が差している

夕日が一日の終わりを告げている