本読むうさぎ

生きるために、考える

熱と味を感じるコーヒーの発見

今週のお題「大発見」

うさぎは傲慢で忘れっぽいから、すぐに未来に不安を抱いたり、過去を思い出して懐かしんだりする。目は前を向いていても、見てはいない。なんとも傲慢なことだ。

 

ふらりとカフェに入り、ホットコーヒーを買った。マグカップを受け取り、できるだけ人目につかない隅の席に座った。本を読みながらちびちび飲んでいたが、ふと、コーヒーを味わっていないことに気づいた。

黒々とゆらめくコーヒー。ほのかに湯気が立っている。口をつけたところに水滴が一滴、ぷっくりとふくらんでいる。カップを持つ。揺れる水面。指に伝わる冷たさ。口元に運ぶ。流れ込んでくる一瞬、コーヒーに映るうさぎの顔。口内に広がる熱と苦みを感じながら間抜け面を思い出す。飲み込む。熱が食堂を通って胃に落ちていく。ほうと小さく息をついた。

 

コーヒーを味わうのって、こんなに集中力が要るんだな。

コーヒーの熱や苦みというのは、こんなものなんだな。

 

あの時、コーヒーを味わっていたのは、果たして何人いただろうか。

コーヒーを飲むためにコーヒーを飲んだのは、果たして何人いただろうか。

コーヒーの味を知る。小さな大発見をした。