本読むうさぎ

生きるために、考える

うさぎの本棚 『羅生門・鼻』芥川龍之介

荒れ果てた羅生門で死体の髪の毛を引き抜く老婆を目撃した男が生きる道を見つける『羅生門』。見苦しいほど大きな鼻をもつ僧侶が、短くしようとあれこれと奮闘する『鼻』。「王朝もの」と呼ばれる、平安時代の物語をもとにした歴史小説が収録されています。

中でも『今昔物語』を出典とした作品が多く、作者はそこに描かれている人間の心理を「美しい生々しさ」と評しています。「当時の人々の泣き声や笑い声」の中に「軽蔑や憎悪」が交じっているのを感じた作者は、古い物語に独自の解釈を加えることで近代の人々の姿を描き出そうとしました。

おかしさの中に卑しさを、楽しさの中に醜さを潜ませて、長い間読み継がれてきた物語です。

 

a.r10.to