お魚 金子みすゞ
海の魚はかわいそう。
お米は人につくられる、
牛は牧場で飼われてる、
鯉もお池で麩を貰う。
けれども海のお魚は
なんにも世話にならないし
いたずら一つしないのに
こうして私に食べられる。
ほんとに魚はかわいそう。
魚のことをかわいそう、と思っているのだろうか。
食卓に並べられた魚を見ているのだろう。
かわいそうとは思うが、この後の私が何をするかというと、食べるのだ。
かわいそうと思った目の前の魚を。
いたずら一つしない魚を。
かわいそうと思う心と慈しむ行動が一致するとは限らない。
人間の身勝手さを生々しく描いている。