「食む」と書いて「はむ」と読むことがある。 小動物がせかせかと口を動かす様子が思い浮かぶので気に入っている。 響きがいい。「は」も「む」も柔らかく、丸っこい音がする。文字だとくるんと一回転している。「くう」や「かむ」ではだめだ。歯でガリリと…
桜で一句詠みたいものだけどどうにも思いつかない。 表現するって何とも難しいものだな。 さまざまの 事思ひ出す さくらかな 松尾芭蕉 限られた音数で場面を、心情を描くのが俳句の楽しみ。 言いたいことのあれこれを削って省いて捨てる。そうして研いで磨い…
日本語は文字そのものに「美」を見出す不思議な言語。 バラ、ばら、薔薇、同じ音でも表現は幾通り。 不思議なことに、表現を変えると呼び起こされるイメージも変わる。 どの表現を使うかには、その人の価値観が反映している。美意識と言ってもいいかもしれな…
連日、就寝時刻が日付を超えることがあり、頭が茫としていた。 頭が鈍ると判断が鈍る。判断が鈍ると些細な言動にボロが出る。そこからさらに大きなボロにつながり、ボロボロと崩れていく。 作るは難しく、壊すは易いものだ。 睡眠不足が続くと認知能力が下が…
噛みごたえのある本と出会った。 耳を聾する轟音とともに、すべてが始まったのは、このときだった。 母の日の翌日、海水浴に行き、女と映画を楽しみ、一晩をともにし、人を撃ち殺し、動機について「太陽のせい」と答える。 端から見ると狂っているようにしか…
魚を焼いて食べる。 塩気と脂を緑茶で押し流す。 食道を伝って胃へ広がっていく。 三月の朝日が差し込んでいる。 どうしようもなく春だ。 ランキング参加中短文エッセイ ランキング参加中ライフスタイル
人はなぜことばに救われたり、支えられたりするのだろう。 何気ない一言だったり、小説の一節だったりに心を動かされるのはなぜだろう。 国語の教科書にも載っている谷川俊太郎の『生きる』という詩がある。教科書のいちばんはじめに載っていて、四月の最初…