本読むうさぎ

生きるために、考える

100行書いて一行当たる 『三行で撃つ』近藤康太郎

「三行で撃つ」。この上なくシンプルで、力強く、核心を撃ちぬくタイトルだこと。記者、ブロガー、学生、物書き問わず、「文章を書く」人すべてに読んでほしい。読んでもらうための文章の書き方を筋道立てて説明するかと思えばわけわからない横道に逸れることもある。わかりやすいかと思えば一行を読むのさえしんどいところもある。でも読んでしまう。なぜか。文が脈打っている。著者の息遣いが聞こえる。言いたいけど、言い切れないもどかしさが宿っている。

 

気に入った一節がある。「うまい文章」をどう定義するか。とても難しい。答えるのが難しい質問とは、問い方が間違っているのだ。「うまい文章」を分けてみる。「うまい」と「文章」だ。では「うまい」とは何か。「わかりやすい」だ。「うまい=わかりやすい」で覚えてしまえ。テストに出る。次。「文章」とは何か。言葉の集まりである。「言葉」とは何か。思いや、考えを伝えるものだ。「うまい文章」とは「思いや考えをわかりやすい言葉で表したもの」だ。こうなるとイメージしやすい。行き詰ったとき、たいてい問い方が間違っている。本書では問いの「変奏」と表現していた。なんと豊かな表現!うまくいかないときは、問い方を変えてみる。リズムやメロディーを変えるように。

 

三行で撃つどころか10行、20行撃ってもかすりもしない。下手な鉄砲をいくら撃っても当たりゃしない。たいていはここで離れる。20で当たらないなら50。それでも駄目なら100。100行書いて一行当たれば御の字。これくらいでいい。