本読むうさぎ

生きるために、考える

うさぎの本棚 怖い女の話 3選

悪女、毒婦、妖女……古今東西、怖い女性が登場する話は枚挙にいとまがありません。

火に飛び込む虫のように、危ないとわかりながらも引き寄せられる魔力が潜んでいるのでしょう。

今回は怖い、けどどこか魅力的な女性が登場する小説を3つご紹介します。

 

BUTTER  柚木麻子

男たちの財産を奪い、殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子(カジマナ)。若くも美しくもない彼女がなぜ――。週刊誌記者の町田里佳は親友の伶子の助言をもとに梶井の面会を取り付ける。フェミニストとマーガリンを嫌悪する梶井は、里佳にあることを命じる。その日以来、欲望に忠実な梶井の言動に触れるたび、里佳の内面も外見も変貌し、伶子や恋人の誠らの運命をも変えてゆく。(新潮社より)

容疑者の梶井の異常さ、食へのこだわりに不思議と惹かれます。社会の根底に渦巻いている、誰もが胸に宿しているどす黒い欲望が生々しく描かれています。

「自分はこの人たちとは違う」と思っても、どこか当てはまるところがある。怖くもおもしろい一冊です。

 

a.r10.to

 

痴人の愛  谷崎潤一郎

きまじめなサラリーマンの河合譲治は、カフェでみそめて育てあげた美少女ナオミを妻にした。河合が独占していたナオミの周辺に、いつしか不良学生たちが群がる。成熟するにつれて妖艶さを増すナオミの肉体に河合は悩まされ、ついには愛欲地獄の底へと落ちていく。(新潮社より)

奔放で魔性的な女性を表す「ナオミズム」という言葉が生まれたほど大ヒットした作品。

破滅的な行動を繰り返すナオミと、彼女に振り回されても離れられない河合の歪んだ関係がこの後どうなるのか、知りたいような知りたくないような気持ちになります。

 

a.r10.to

 

母性  湊かなえ

女子高生が自宅の中庭で倒れているのが発見された。母親は言葉を詰まらせる。「愛能う限り、大切に育ててきた娘がこんなことになるなんて」。世間は騒ぐ。これは事故か、自殺か。……遡ること十一年前の台風の日、彼女たちを包んだ幸福は、突如奪い去られていた。母の手記と娘の回想が交錯し、浮かび上がる真相。これは事故か、それとも――。(新潮社より)

私の母親は毒親だったのか――。母の手記と娘の回想を交互に行き来しながら、二人の関係や台風の日の出来事が描かれます。「愛能う限り」という耳なじみのないセリフに秘められた思いがいつまでも胸に残ります。

 

a.r10.to

 

以上、怖い女性が登場する小説3選でした。

読み応えのある作品ばかりなので、本を選ぶときの参考にしてもらえればと思います。