太宰治の未完の作品『グッドバイ』をさせないか、という提案から始まったという本作。
「あのバス」でどこかへ連れていかれる前に、五人の恋人たちに別れを告げて回る星野一彦。彼の監視役はブロンドの髪をなびかせ、プロレス選手のような巨体を揺らし、黒く塗りつぶした辞書を携える謎の女、繭美。
時に事件に巻き込まれ、時に事件を巻き起こしながら、恋人たちとの別れ行脚に奔走する不思議な数週間を描くグッドバイ・ストーリーだ。
Miles Davisの楽曲に「Bye Bye Blackbird」という曲がある。とある登場人物が「悩みや悲しみをぜんぶつめこんで行くよ。僕を待ってくれているところへ。ここの誰も僕を愛してくれないし、わかってもくれない」ことを歌っていると紹介する。「ここ」に別れを告げた黒い鳥はいったいどこへ飛んでいったのだろう。