からたちの花 北原白秋
からたちの花が咲いたよ。
白い 白い 花が咲いたよ。
からたちのとげはいたいよ。
青い青い針のとげだよ。
からたちは畑のかきねよ。
いつもいつもとおる道だよ。
からたちも秋はみのるよ。
まろいまろい金のたまだよ。
からたちのそばで泣いたよ。
みんなみんなやさしかったよ。
からたちの花が咲いたよ。
白い 白い 花が咲いたよ。
からたちはミカンの仲間で、黄色いおしべとめしべを白い花弁が囲むように咲く。
春に咲き、甘い香りがする。
「花」「とげ」「金のたま」とからたちの様子を描く中に、「かきね」「泣いた」と生活の様子が差し込まれる。
いつも通る畑の垣根に見える白い花。針のようなとげ。丸く実った金色の実。からたちのそばで泣く子ども。
なぜ子どもは泣いているのだろう。泣きじゃくっているのか、声を押し殺して泣いているのか。
子どもはもしかしたらあなたかもしれない。人知れず涙を流し、ひとり耐え忍ぶいつかのあなたかもしれない。
あなたなら、子どもに何と声をかけるだろうか。それとも、黙ってそばにいるだろうか。あるいは……。