本読むうさぎ

生きるために、考える

今日を生きるヒント


『+1cm』キム・ウンジュ/文 ヤン・ヒョンジュン/イラスト 簗田順子/訳

はじめに

ほんのちょっと、見方や考え方を変えるだけで世界は変わる。人生を変えるのに特別なことも、運命の出会いもいらない。今日を生きるヒントがちりばめられた一冊です。

 

本当にそれだけなのか?

人間は思い込みの生き物です。患者に「これは薬です」とただのサプリメントを飲ませたら病気が治ったというプラシーボ効果や、「アメリカ人は愛国心が強い、日本人は空気を読む」という国で人柄を想像することも思い込みによるものです。

あらかじめ予測しておくことで、何かトラブルが起きたときにとっさに対応できます。過去の事例から共通点を見つけることで、次に備えることができるのです。しかし、この思い込みによって生きづらくなるときがあるのです。

 

道ばたで財布を拾ったときに、天使の自分と悪魔の自分が言い争いを始めます。天使は「交番に届けよ」と説き、悪魔は「盗んでしまえ」とそそのかします。あなたなら財布をどうしますか?

 

そもそも、なぜこの二択から選ばなければならないのでしょう。財布を元あった場所に戻してもいいし、見なかったふりをして通り過ぎてもいい。直接届けに行くこともできる。けれども二択を示されたとき、人はそのどちらかから選ばなければと思い込んでしまう。これを教育学者の苫野一徳さんは「問い方のマジック」と呼んでいます。

 

「選挙にいくべきかどうか」「男女の友情は成立するかどうか」「人は生まれながらに不平等かどうか」…。すべて「問い方のマジック」です。条件が変われば答えも変わるし、当てはまる人もいれば当てはまらない人もいる。なぜなら、二択で割り切れるほど世の中は単純じゃないからです。

 

「問い方のマジック」に振り回されないために、自分で自分に問いかけることが大事です。「本当にそれだけなのか?」「他の見方はできないのか?」「他の可能性はないのか?」

先ほどの例でいうと、「皆が選挙に行きたい(行きたくない)と思うのはどういう時か」「男女で友情が生まれるのはどのような時か」「誰もがある程度平等な存在としてお互いを認め合うにはどうすればいいか」というように、違う形に組み直してあげるといいのです。もちろん、ここで示したものが正しいという訳ではありません。

 

 

 

「+1cm」は、「こんな見方や考え方があるよ!」「こんな問いの立て方があるよ!」ということを紹介してくれています。単なるポジティブワードを並びたてたサプリメントのような本ではなく、思い込みで凝り固まった頭の風通しをよくしてくれる本です。

 

本を読んだからといって悩みが解決するとは限りませんが、悩みを別の形に組み直したり、今までと違う受け止め方をしたりすることができます。

最後にサブタイトルを紹介して終わろうと思います。「たった1cmの差があなたの世界をがらりと変える」